ボランティアで地域の桜を守る
古川博美さん

 

43年間の勤め人を卒業した古川さんは、その翌日からウオーキングを始めたそうです。1週間歩いてみてとても気になることがありました。
それは、近所の公園に沢山のゴミが捨てられていたことです。「折角体を動かすなら世間に役立つことをしよう」とウオーキングを中止、代って翌日からゴミ拾いのボランティアに切替えたことがそもそものきっかけのようです。

このボランティアを続けるうち、次に気になったことは園内の雑草です。抜けども刈れども彼らの勢力には根負けします。そこで市役所公園みどり課了解のもと、挿し芽から育てた紫陽花苗200本を園内の雑草地帯へ植え付けました。
夏場の水やりは大変ですが、梅雨時には道行く市民の目を楽しませています。

更に気になったことは、自宅付近にある4つの公園に植えられている桜(360本)です。
①根元から枯れている  ②枝が腐っている  ③不適正箇所で切られている ④こぶ病が発生している、などです。
かつて梨の木の剪定を手伝った経験があることから剪定には興味があり、独学で桜剪定方法を学びました。以来地域連合自治会の要請を受け落葉期には「桜守」へと変身しています。既に10年が経過しました。

桜の剪定要領について

「ご家庭の庭で桜を育てている方もあろうから、是非掲載してほしい」との要望がありましたから剪定方法を簡潔に掲載します。

◆どのような枝を剪定すべきか

根接ぎをするなど、特殊な工作をしないかぎり桜の寿命は80年から100年とされております。しかも桜は「厭地性(いやちせい⇒同一地での連作をいやがる)」が強いので、”枯れたらまた苗木を植えればよい”といった安易な考えは捨て、現存の桜を大事に育てたいものです。
「桜切る馬鹿」と先人の教えのとおり、桜はとても弱い樹木なので桜には可能な限り鋸を入れないことが大原則です。しかし、
① 強風や車に引っかけられて折れた枝 ⇒ 発見次第早期に剪定する
② 路上に低く垂れ下がり車両に引っかけられる恐れがある枝 ⇒ 落葉後に剪定する
③ 枝先から幹に向かって枯れ進む枝(枯れは枝先から始まる)⇒ 発見次第早期に剪定する
④ 枝同士がこすれ合う程の過密枝 ⇒ 落葉後に剪定する
⑤ こぶ病など病気の枝 ⇒ 落葉後に剪定する
などは必ず適正な箇所で切り落とすことで、その桜木全体を保護します。放置しておくことは反面「桜切らぬ馬鹿」ともいえます。

◆「ブツ切り剪定」はケガのもと

それらを何故切り落とさねばならないか、切るならばどの部位をどのように切り落とすかを説明しますと、枯れた枝はやがて腐ってきます。
腐った枝の腐朽菌は桜の幹内に入り込み、樹勢を劣化させそれが寿命を縮めることになります。枝を切り落とす時、少し枝を残して切る人を見かけます。いわゆる「ブツ切り」ですが、この場合切り残された側の枝はやがて枯れ、腐ります。(ただし、樹勢が強い桜木の場合、まれに切り口付近から新芽を吹き出すといったこともあります。八重桜は「ブツ切り」には絶対的に弱いです。)

 

◆どの部位をどのように切り落とすか

枝を切り落とす時は、枝の分かれ目付近(ブランチカラーといいます。)で切ります。枝の分かれ目にはシワがありますのでこれを目印に切ります。以下は写真のとおりです。

 

◆二段切りについて

切り残すべき側の皮が引きちぎられることを「引き裂かれ」といいます。
「二段切り」を怠っていきなり枝を切り落とすと、枝の重みで鋸の動きよりも枝の落下が先行し、皮が引きちぎられ傷口を必要以上に大きくしてしまいます。
左の写真のとおりです。
この対策として、ブランチカラーで切り落とす前に枝の大部分を切り落としておく必要があります。
その方法は、次の通りで「二段切り」といいます。
① ブランチカラーから約10㎝枝先の箇所を「下から上に向かって」枝直径の3分の1位切り上げる(一段目)
② ①の箇所から更に枝先約3~5㎝の箇所を上から鋸を入れる(二段目)
切り落とされる側の枝の重みで簡単に枝が切り落ちます。
(その後、残った約10㎝の枝をブランチカラー部で慎重に切り落とします。)

◆こぶ病について

こぶ病は細菌によりもたらされる病気で、放置しておくとこぶから先端の部分は枯れます。のみならず、細菌が風などで飛散して、周りの枝や周辺の桜木の枝に伝染します。切り落とす際の注意としては、
① 細菌をまき散らさないように静かに慎重に作業を行う
② 切断箇所はこぶ病から距離をとり、幹に近い箇所のブランチカラー
③ 切り落とした枝のこぶの部分はバーナーを用いて高熱殺菌する、使用した
鋸の刃先もその都度バーナーで熱殺菌し、次の作業時に感染させないこと
④ 切り口には癒合剤を塗布しておく
などがあげられ、自分の桜はもとより、近隣の桜に対する感染予防の配慮が必
要です。
このほか、「入り皮の木の処理」「蘖(ひこばえ⇒根元から吹き出た枝)と胴吹枝の処理」などの問題がありますが紙幅の都合上擱筆します。