自宅で死ぬという選択をするためのガイド③

要介護認定を受けなくても訪問看護は受けられる

 

ここまで読んで「でも訪問看護って利用するまでの手続きが複雑っぽい」と思う人もいるかもしれない。前回、「在宅ケアを受けるには『要介護認定』を受ける必要がある」と書いたが、じつは医師が「この患者さんは継続的に在宅ケアを受ける必要がある」と診断すれば、要介護認定を受けていなくても訪問看護を受けることができる。この場合に使われる保険は「医療保険」となる。

 

前に記したが(「4 本人、家族が準備すべきこと」参照)が、保険には「医療保険」と「介護保険」の2種類がある。そして訪問看護にも「医療保険を使って」と「介護保険を使って」の2種類の利用形態があるのだ。

 

簡単に言えば、要介護認定を受けていれば「介護保険」の訪問看護利用、要看護認定を受けていなければ「医療保険」の訪問看護利用になる。医療保険を使っての訪問看護は、通院困難でなくても利用可能だし、年齢制限もないので子どもでも利用できる。

 

ただし、利用には制限がある。

・「看護師が継続的に関わる必要性がある」こと。

・1日1回(90分ほど)、週3回まで。

・1か所の訪問看護ステーションから1人のみ対応。

(この制限には3つの例外があるので後述する)

 

いっぽう、介護保険を使っての訪問看護は利用の制限がない。要介護度に応じてケアプランに組み込める範囲内であれば制限なく使える。

したがって、もしも通院中であれば要介護認定を受ける前でも一度、施設で「訪問看護を受けられないか」と医師や看護師に相談してみるとよい。たとえば手術を受けて退院後に傷あとの処置が必要な場合、外来だけでなく訪問看護での対応が可能だし、服薬管理に訪問看護師に関わってもらうことも可能である。訪問看護は「意外と使える」のだ。

 

「医療保険」での利用制限が外れる3つの例外

 

  • 「特別訪問看護師指示書」が主治医から発行されている場合

これが発行されていると14日間、基本的な制限から外れて「医療保険」の訪問看護を受けることができる。発行を受けられるのは「肺炎や心不全などの急性増悪」「疾病に関わらず終末期であること」「退院直後」。とくに退院直後はこの指示書の発行があると在宅移行時の点滴などの医療ケア、おむつの交換などの介護支援まで集中的にサポートすることができるので本人はもちろん家族も安心だ。

 

  • 「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当する場合。(別表1参照)

週4回以上の訪問診療・訪問看護、1日に複数回の訪問看護、2か所(3か所)のステーションの併用で複数名の訪問看護が可能。退院時・外泊時の訪問看護。医療保険による訪問看護となるのでGH(グループホーム)、特定施設への訪問看護、特定施設への訪問看護が可能になる。

 

  • 「厚生労働大臣が定める状態等」に該当する場合。(別表2参照)

週4回以上の訪問看護、1日に複数回の訪問看護で2か所(3か所)のステーションの併用で複数名の訪問看護が可能。退院時・外泊時の訪問看護、長時間の訪問看護が可能。

 

このように訪問看護には利用者にとって使いやすいようにいろいろな制度や仕組みがある。利用者にとって「こんなことができると助かる」と思うことがあれば、ぜひ施設の担当者(医師、看護師、ソーシャルワーカー)に聞いてみるのがよい。

 

別表1 厚生労働大臣の定める疾病等の利用者

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・末期の悪性腫瘍

・多発性硬化症

・重症筋無力症

・スモン

・筋萎縮性側索硬化症

・脊髄小脳変性症

・ハンチントン病

・進行性筋ジストロフィー症

・パーキンソン病関連疾患

進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。)

・多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群)

・プリオン病

・亜急性硬化性全脳炎

・ライソゾーム病

・副腎白質ジストロフィー

・脊髄性筋萎縮症

・球脊髄性筋萎縮症

・慢性炎症性脱髄性多発神経炎

・後天性免疫不全症候群

・頸髄損傷

・人工呼吸器を使用している状態

 

別表2 厚生労働大臣の定める状態等の利用者

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・在宅悪性腫瘍患者指導管理もしくは在宅気管 切開患者指導管理を受けている状態、または気管カニューレもしくは留置カテーテルを使用している状態

・以下の指導管理を受けている状態

在宅自己腹膜灌流指導管理

在宅血液透析指導管理

在宅酸素療法指導管理

在宅中心静脈栄養法指導管理

在宅成分栄養経管栄養法指導管理

在宅自己導尿指導管理

在宅持続陽圧呼吸療法指導管理

在宅自己疼痛管理指導管理

在宅肺高血圧症患者指導管理

・人工肛門または人工膀胱を設置している状態

・真皮を越える褥瘡の状態

・点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態

 

-自宅で死ぬということ- 著:小阿羅 虎坊(こあら・こぼ)
※「自宅で死ぬということ」は第2・4金曜日に更新します。
次回は4月24日にお届けしますのでお楽しみに。